FIPとその診断について

FIPとその診断について

大阪府豊中市のハッピー動物病院です。このページではFIPとその診断方法について簡単に書かせていただきます。

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?

FIP(猫伝染性腹膜炎)は猫コロナウイルス(FCoV)による感染症であり、発症すると腹膜炎を起こし腹水がたまることが多いため、この名前が付きました。

FIPの原因

FIP(猫伝染性腹膜炎)の原因となるのは猫コロナウイルス(FCoV)と呼ばれるウイルスです。ただし、FCoV自体がFIPを起こすのではなく、FCoVが猫の体内で変異を起こし猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)となって、FIPを発症すると言われています。

通常のFCoVは腸炎を起こすことがあるため、腸コロナウイルスとも呼ばれます。感染していても症状を示さないことも多く、血中抗体の検査による調査では、日本の猫の50%以上が感染したことがあるというデータも出ています。

FCoVFIPVに変異をする原因は現在わかっていませんが、FCoVの一部が何らかの原因で変異をして、FIPを発症すると言われています。

FIPの症状

FIPを発症した猫は、初期には元気や食欲の低下や発熱などの一般的な体調不良の症状を起こすことが多いです。そのため、「何か体調が悪そう」という主訴で動物病院を受診することも少なくありません。また雑種猫より品種猫、単独飼育より多頭飼育で発症率が高いと言われています。

FIPにはおおまかに「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」という2種類タイプとその混合型があり、上記の症状以外に、それぞれ以下のような症状を起こします。

ウェットタイプは腹水がたまるタイプのFIPであり、腹水による腹囲膨満や食欲不振、下痢などが出てくるケースが多いです。1歳未満の比較的若い猫でこのタイプのFIPを発症するケースが多いです。

ドライタイプは肉芽腫と呼ばれるしこりを体の中に作るタイプのFIPであり、元気や食欲の低下などの非特異的な症状以外に特徴的な症状が出にくいタイプのFIPです。一部の猫では、眼球内に炎症を起こして眼が濁ってきたり、脳に肉芽腫ができてけいれん発作や起立不能などの神経症状を起こすことがあります。

FIPの診断について

FIPは、いくつかの検査を組み合わせて診断していきます。

超音波検査

腹水の有無や腹腔内のリンパ節の腫大、肉芽腫の有無をチェックするためなどに行います。

血液検査

FIPを発症した猫では、血液中のグロブリンの数値や炎症の数値、猫コロナウイルス抗体の数値が上がることが多いです。また、血液の中にウイルスが存在するのかどうかを調べることもあります。

腹水検査

ウェットタイプの猫では、腹水中にコロナウイルスの遺伝子診断を行う事によってFIPの診断に大きく役立ちます。

※FIPの診断はどの検査をしたら確定できるというものではなく、以上の検査を症状や経過およびその他の検査と組み合わせて、総合的に診断していきます。その為、特にドライタイプの場合は診断に苦慮する事も珍しくなく、リンパ腫などの病気との鑑別も非常に難しい場合があります。

 

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