当院で行うFIPの治療(2024.5加筆修正)

当院で行うFIPの治療

大阪府豊中市のハッピー動物病院です。当院で行うFIPの治療は、抗ウイルス薬であるレムデシビルとGS441524を用いて行います。この2つの薬は正常な核分裂を阻害することによってウイルスの増殖を防ぐタイプの抗ウイルス薬です。注射による初期治療と内服によるその後の治療に分かれます。

レムデシビルの注射

ある程度重症なFIPの場合、入院下でレムデシビルを静脈注射で毎日投与します。これをある程度元気と食欲が出るまで行います。期間は重症度によって異なりますが、おおよそ3-7日程度になる事が多いです。
※比較的軽症の場合はレムデシビルを使わずに後述のGS441524の経口投与からスタートする場合もあります。

GS441524の内服

レムデシビルの注射である程度症状の改善が見られましたら、GS441524と呼ばれる内服薬を猫の体重に合わせて11回内服してもらいます。服用前と服用後の1時間は食べ物を与えない様にします。

大きな副作用のない薬ですが、薬の効果や有害反応のチェックのため、1-3週間に1度通院してもらい体温測定や血液検査、超音波検査などをして経過を観察します。

合計84日間投薬を続けて、FIPが寛解(症状や検査で異常が認められない状態)になっていればいったん治療を終了します。その後定期的に検診を行い3ヶ月間再発がなければ完治と判断します。


FIPの治療成績

FIPの治療に関して最近大規模な報告の論文が発表されました。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1098612X231194460

この論文では、171頭の猫を対象に当院と同じレムデシビル及びGS441524の投薬治療を行い、

  • 162頭(94.7%)が寛解し長期生存

という治療成績を報告しています。

 


FIP治療のメリット・デメリット

以上のようにレムデシビルおよびGS441524によるFIP治療は非常に効果の高いものとなっております。しかし、以下のようにいくつかのデメリットがあります。

新しいFIP治療のメリット

高い治療効果を期待できる

今までの治療では、炎症を抑えて症状を緩和するためだけの治療しかできませんでしたが、新しいFIP治療では高い治療効果が期待でき、完治できる可能性があるのがもっとも大きなメリットです。

法律面・倫理面・安全面で問題ない治療ができる

一部の動物病院で行われている中国製のFIP治療薬はGS441524に類似した成分の入った薬ですが、成分がはっきりしておらず、他の製薬会社の特許権侵害をしている可能性が指摘されている薬です。法律面・倫理面でグレーな側面があり、安全面にも疑問点がある薬でした。しかし、レムデシビルとGS441524を合法的に輸入できるようになり、それらの面での懸念なく治療をすることが可能になりました。

新しいFIP治療のデメリット

長期的な効果や副作用が不明

レムデシビルおよびGS441524によるFIPの治療は34年前に初めて報告があった新しい治療法となっております。そのため、長期的な予後や副作用についての報告はまだ存在せず、数年後の再発率についても不明な点があります。

費用が高額

レムデシビルおよびGS441524は高額な薬であるため、どうしても治療が高額になってしまいます。体重・FIPの病態によって大きく左右されますが、84日間の治療薬代が概算で50~200万円程度必要になります。

 

まとめ

当院で行うレムデシビルとGS441524を用いた84日間のFIP治療はかなりの治療効果が期待できますが長期的な予後に関しては不明な点が多く費用も高額になります。ただし現時点ではFIPの最善の治療法だと思われます。

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FIPとその診断について(https://www.happy-ac.net/blog/1298)