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当院で行うFIPの治療

当院で行うFIPの治療

当院で行うFIPの治療は、注射による初期治療と内服によるその後の治療に分かれます。

レムデシビルの注射

レムデシビルを毎日投与します。重症度により入院での静脈注射もしくは通院(もしくは自宅)での皮下注射にて投与します。

GS441524の内服

レムデシビルの注射である程度症状の改善が見られましたら、GS441524と呼ばれる内服薬に切り替え治療を継続します。

小さい錠剤のお薬を、猫の体重に合わせて11回内服してもらいます。

大きな副作用のない薬ですが、薬の効果や有害反応のチェックのため、12週間に1度通院してもらい血液検査や超音波検査などをしていきます。

合計84日間投薬を続けて、FIPが緩解(症状や検査で異常が認められない状態)になっていればいったん治療を終了します。その後定期的に検診を行い数ヶ月間再発がなければ寛解と判断します。


FIPの治療成績

FIPの治療に関してはいくつかの論文で報告があります。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1098612X19825701?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed&

この論文では、31頭の猫を対象にレムデシビル及びGS441524の投薬治療を行い、

  • 26頭(84%)がFIPの改善
  • 5頭(16%)が改善なく死亡(安楽死)

という治療成績を報告しています。

また、改善した26頭のうち、18頭(58%)が治療終了後の追加治療を必要とせず、8頭(26%)は再発により再度投薬治療を必要としたとのことでした。なお、これは過去の報告で用量など現在の治療法とは若干異なる点がある為、現在の治療成績は大幅に向上している可能性が高いと思われます。

 


FIP治療のメリット・デメリット

以上のようにレムデシビルおよびGS441524によるFIP治療は非常に効果の高いものとなっております。しかし、以下のようにいくつかのデメリットがあります。

新しいFIP治療のメリット

高い治療効果を期待できる

今までの治療では、炎症を抑えて症状を緩和するためだけの治療しかできませんでしたが、新しいFIP治療では高い治療効果が期待でき、完治できる可能性があるのがもっとも大きなメリットです。

法律面・倫理面・安全面で問題ない治療ができる

一部の動物病院で行われている中国製のFIP治療薬はGS441524に類似した成分の入った薬ですが、成分がはっきりしておらず、他の製薬会社の特許権侵害をしている可能性が指摘されている薬です。法律面・倫理面でグレーな側面があり、安全面にも疑問点がある薬でした。しかし、レムデシビルとGS441524を合法的に輸入できるようになり、それらの面での懸念なく治療をすることが可能になりました。

新しいFIP治療のデメリット

長期的な効果や副作用が不明

レムデシビルおよびGS441524によるFIPの治療は34年前に初めて報告があった新しい治療法となっております。そのため、長期的な予後や副作用についての報告はまだ存在せず、数年後の再発率についても不明な点があります。

費用が高額

レムデシビルおよびGS441524は高額な薬であるため、どうしても治療が高額になってしまいます。治療強度・体重や状態によりますが、12週間の注射と10週間の飲み薬代で50~150万円程度の費用が必要となります。

 

まとめ

当院で行うレムデシビルとGS441524を用いた84日間のFIP治療はかなりの治療効果が期待できますが長期的な予後に関しては不明な点が多く費用も高額になります。ただし現時点ではFIPの最善の治療法だと思われます。


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